« ヘッドホンアンプの製作 | トップページ | ヘッドホンを購入 »

2010年8月 5日 (木)

ヘッドホンアンプと逆相クロストークについて

 最近暑い日が続いています。今年は例年になく暑いような。
 外に出るのも億劫なんですが、先日数日涼しい日があったので秋葉原にてヘッド
ホンアンプを購入。無事完成していい感じだったものの、偶々片chだけ鳴らしてみ
ると絞っている方からも音が出るではないですか。(クロストーク)最初これはアン
プの問題かと思ったんですが、調べるとすぐにヘッドホンのケーブルの問題だと
判明しました。アンプ自体は無実でした。

 この問題は、低インピーダンス駆動(つまり出力と直列に抵抗の入っていない、
ダイレクトドライブ)のアンプを使う限りある意味避けられない問題なのですが、
何故か殆どネット上でも議論されているのを見ないのでここでちょっと説明したい
と思います。
 もしかしたらヘッドホンアンプを使うからにはみなさん下記に示す対策がされ
た上等なヘッドホンを使っているから問題ないのかも?たしかに私も製作後新
しいヘッドホンが欲しくなってきました。
まあ音が出ないわけではないので気にしなければいいのかもですが。
 この問題はヘッドホンのドライブへ行く配線のリターン線がL、Rで共通しているか、
もしくは途中でリターン線同士が短絡されると起こります(例えば延長ケーブルの
使用など)。いわゆる「共通インピーダンスの問題」というものです。
 電子回路設計時でも配線でよく気にする問題です。

まず原理上クロストークが起こりにくい配線の等価回路を示します。全てのヘッドホン
が下記のような配線であれば配線でのクロストークは起こらないはずです。
(アンプの性能が十分な上で起こるとすればジャックのGNDの接触が悪い場合となり
ます。)

Hp1
Ro:アンプの出力インピーダンス
Rh:ホット側の配線インピーダンス
Rc:コールド側の配線インピーダンス
ZL,ZR:ドライバーユニットのインピーダンス


 しかし実際のヘッドホンはリターン線が接続され共通になっているか、もしくは途中
でショートされていることが多々あるようです。うちにある5000円位のインナーイヤの
やつはみんなこうなっているようです。(延長ゲーブルの類同様)

Hp2

Hp3

 この場合、Rcとつけたのが共通インピーダンスとなります。これはリターン配線
のインピーダンスです。ここで例えばRchを絞った場合を考えてみると、Lchの電
流はRcと(ZR+Rh+Ro)のインピーダンス比により分流します。つまり、Lchの駆動
電流の一部がRchにも"逆向き(逆相)"に流れることになります。これは別に片側
絞らなくても常に相互に影響しあう状態となっています。}

例えばLchの電流をI(Lch) 分流電流をir 共通インピーダンスの電流をi(Rc)とすると、

I(Lch) = ir + i(Rc)  ・・・・ (1)
ir/i(Rc) = Rc/(ZR+Rh+Ro)   ・・・・ (2)
ir = (Rc/(ZR+Rh+Ro)) x i(Rc)   ・・・・ (3)

 よってこの「逆相」クロストークを改善するには、irを小さくすればいいのですから、
(3)式の分母を大きくすればいいわけです。ここで、ZRは負荷なのでここの消費電
力で音圧が決まるので単純に増やせばいいわけではないです。またRhは配線抵
抗なのでここはわざわざ増やすところではない。結局アンプの出力インピーダンス
Roを増やすのが対策の一つとなるのがわかります。実際、出力に抵抗が入った
アンプは逆相クロストークは少ないです。
 もう一つ、リターン線を極太にして分子側を小さくしてもいいかもしれません。

 なお、クロストークは互いのchに逆相に加わりますので、同相分、つまりセンター
の音圧が少し下がり、やや音場が広がったような感じになると思います。
 POPS系ではセンターはボーカルがあるので、ボーカルが少し小さく、伴奏が大き
く聞こえる傾向になることになります。

 まとめますと、このクロストークの問題を緩和するには、左右のリターン線がHPアン
プからドライバまで接続されていないことが必要です。延長ケーブルの使用はそこで
接続されるのでNGとなります。(自作なりで分離されるようにすればもちろんOKです。)
あとは、そういう配線のヘッドホンを使うか、ケーブルを自分で替えるかでしょう。
 アンプで出来る緩和策は出力に直列抵抗を追加してその分アンプの電圧利得
を上げれば良いです。市販のAV機器のヘッドホン端子の多くは最初からそうなって
いるんで、問題となってないんだと思います。ただ低インピーダンスドライブでなくなっ
てしまいますが。
 あとの対策は....音が出ないわけではないので気にしないというのもアリかもしれま
せん。

 未確認ですが、ヘッドホンは120Ωでドライブするのが良いという仕様?みたいな
のがあるようで、これに準拠して製作されると3線式でもクロストークはあまり問題に
ならないでしょう。


 原理がわかったので、簡単に補正する方法も思いつきました。
共通インピーダンスによりお互いに、反対のchから逆相で加わるわけですから、最
初から左右少しブレンドさせとけばいいわけです。毒をもって毒を制す感じ。
つまりあえてクロストークを生じさせてHPアンプを通せばいいのです。

 この効果はわざわざ回路組まなくても、手持ちのCoolEdit2000のチャンネルミ
キサーで右の一部を左、左の一部を右に正相でブレンドさせてあげることで実
験的確認できました。
 ブレンド量はアンプとヘッドホンの状態でかわりますが、うちの環境では10%ほど
相互に加算すると、クロストークがほぼキャンセルされます。
 この原理を回路に組み込むのは容易なので、そのうち試しに実機に追加して
みようと思います。左右それぞれクロスで混ぜなくても、L+Rの信号を作ってこれ
を左右に加算してもいいはずです。
 一番簡単な回路は左右のラインに1個抵抗入れるだけでもいいはずですが、こ
れは接続先の状態に依存する上、スルーさせている場合本線のクロストークが悪化
するんですすめられません。ただし前段にバッファーいれればそれでいいかもしれ
ません。

 この種の補正は、MAXIMのICなんかでは内臓されているものもあるようです。
携帯機器は電圧が低く、低インピーダンス出力にして必要な電圧を減らすほうが
いいはずなのでこの種の補正は必要になるかもしれません。(もしかしたらそう
なっているかも??)

|

« ヘッドホンアンプの製作 | トップページ | ヘッドホンを購入 »

オーディオ・ビデオ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519113/49061890

この記事へのトラックバック一覧です: ヘッドホンアンプと逆相クロストークについて:

« ヘッドホンアンプの製作 | トップページ | ヘッドホンを購入 »