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2012年3月10日 (土)

エステーのエアカウンターSを使ってさらに分解してみた

 エステーの家庭用放射線測定器「エアカウンタS」を購入。実売5000円
強程度で通販などでは販売されており、従来の市販のカウンタからして
かなり安価になったと思います。

 測定してみると、手持ちのdoseRAE2と比べてもかなり近い値を示します。
きちんと校正されていると思います。ただ、0.1uSv/h程度の環境ではかなり
値がぱらつくので何回か測定して平均してみるとかの使い方が必要です。
ただこのような低線量では逆にあまり心配しなくてもいいということなので、
実用面ではあまり問題ないと思います。
 値がばらつくのは低線量ではカウント率が数cpm位になるのが原因でしょう。
パルスの頻度で放射線量を計測しますので、パルスが少なくなると正確に
測定できないのでその分測定時間をかける必要があります。
これは感度とセンサーのコストバランスから言って致し方ないと思います。
改善するには、高感度なシンチレータ式等のセンサーが必要となり、この値段
で販売することは難しくなるでしょう。

 ただ一点要望なのは、低線量向けに高精度モードというか、平均時間を
長くして時間はかかるが値が安定するモードが欲しいです。現在のものは測定
時間を優先していて平均時間が短いようなので。(多分少し線量が高めなとこ
ろを想定しているのだと思うけど。)カウント率があがれば値は安定すると思い
ます。


St_count

下から、エアカウンタ、DoseRAE2、若松ガイガー エアカウンタは多少値が上下
しますが平均するとDoseRAE2の値に近いです。

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 とここまでは普通のレポートでしたが、中味がどうなっているか気になったので
分解してみることにしました。なお老婆心ながら忠告すると、分解すると当然無
保証になるし、場合によっては測定精度にも影響することがあるので自己責任で。
また、分解したものをメーカーサービスに出すのはご法度です。


Airc_a
Airc_b

まず基板全景です。
金属ケースの部分がセンサーです。中にPINフォトダイオードが入っています。
光に反応しないように遮光フィルムが貼られさらに金属ケースでシールドして
います。非常に微小な信号なのでノイズを受けにくくするためです。

 さて、オシロで波形とか見て遊んでいたのですが、ここで事件が。多分ですが、
プローブの先で電圧が高い部分と信号線をショートさせてしまったようで、
回路が死亡してしまいました。マイコンの内部の一部が破壊されたようで表示
が出ない上に消費電流が0.2Aまで増えてしまいました。ただ測定部自体は動作
しているようなでした。こうなるともう戻らないので、さらに分解して解析すること
にしました。(結局もう一台買う羽目に。)

 とりあえず、復活させるつもりだったので開けずにいたセンサー部を開けて
みます。ここを開けてしまうと精度に影響する可能性ありましたので。


Airc_pd

 4つのフォトダイオード(PD)が使われています。ところでこのPD、どこかでみた
ことがあると思い、秋月電子で売られている、浜松フォトニクス製のS6775と比
べると全く見分けがつきません。(画像下の部品)同一製品かどうかは部品に
捺印がないので不明ですが、少なくとも浜松フォトニクス製のセンサではないか
と思われます。
 なおこのPDには、昇圧回路で作成した+30Vの電圧が印加されます。多分この
電圧で誤ってマイコンを壊してしまいました。

Airc_pdb

 PDの裏はアンプです。LMC662Aという、CMOS OPAMPが各PDに一個づつ使
われています。チャージアンプという微小な信号を増幅する回路です。ちなみに
この品番は自作でも定番で使われているものです。
 ネットでよく見かける自作記事の場合はPDを複数並列にしてアンプは1つという
ものが多いのですが、この製品はセンサ1個ごとにアンプを入れています。

 増幅したパルスは、シールドケースの外にあるLM239というこれまた定番コン
パレータで3.3V振幅のロジックレベルのパルスに変換されてます。

 そして検出したパルスはTIのMSP430F4132という電池駆動用の16bitRISCマ
イコンで演算処理されています。

そんなわけで、基板から読み取った大まかな回路構成図です。
注意としてパターンを目視で読んでいるんで間違いはあるかもしれませんし、今
後LOTでも変わる可能性もあるかもしれません。あと製品なんで細かい定数は
書きません。(もっともチップ部品なんで値までみてないけど。)
PDに高めの電圧をかけている以外は特に特殊な回路は使っていないという印象。
それよりセンサ部の実装やマイコンでの処理のほうが重要でしょうね。

Air_c_s_cir

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コメント

たまたま目に留まりましたのでコメントします。
解析ありがとうございました。手元のAIR COUNTERを調べるのに非常に役に立ちました。
大した問題ではないのですが、回路図でコンパレータの入力の+と-が手元のAir CounterSでは逆担っており、-入力にアンプの出力が入っておりました。

ラジウムボールをセンサ付近に近づけてアンプ出力(コンパレータ入力)をオシロで見ていると、4つのいずれかのセンサでパルスが検出されるとカウントする(ブザーが鳴る)ようにして、センサの入射面積を稼いでいるようですね。

投稿: tanaka | 2017年1月 8日 (日) 18時05分

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